記念講演・イベント

Commemorative speech, Event

記念講演

原子力、経済安保、リスクマネジメント

~経産省と財界で経験した大論点への向き合い方~

講師

日下部くさかべ さとし(1982済)
三菱電機株式会社専務執行役CRO
元資源エネルギー庁長官
私は1978年に横浜国大に入学した二期校最後の入学者です。最初は法律を目指しましたが、近代経済学の理路整然とした講義を聞き感銘を受け、経済学に専攻を変更、新飯田ゼミに入り、新進気鋭の若手経済学者や新聞社の論説委員が行う特色ある多くの講義を履修しました。経営学部の平田竹男君と知り合えたことも大変大きく、彼と共に、通産省か大蔵省へ、という意気込みで官僚を目指し、二人で通産省に入ります。
官界在籍36年の間、電力自由化、通信放送融合、買収防衛策解禁、2011年の大震災・福島原発事故後は東電改革・原子力の選択などなど、世論を二分する大論点に向き合う機会を得たのですが、こうした経験を通じて難題に向き合う姿勢が築けたと思っています。資源エネルギー庁長官を最後に経産省を退官し、2018年から財界の一員に転じたのですが、そこから今に至る7年の間も前例のない情勢変化が起きています。特に、トランプ政権対応、ロシアのウクライナ侵攻後のロシア事業の仕切り、人権などのNGO系の要請への対処、不祥事への攻めの対応、頻発するBCP対応、高度化するサイバー攻撃への対処など、多様なリスクが同時多発的に生じていて、今は、この危機管理に集中対処しています。
大学で得た学びの基礎、官界での難題に向き合う経験、これが財界での危機管理に生きている、こう実感しています。記念講演では、こうした、官界36年、財界7年の経験を具体的に紹介することで、母校の良さがお話できればと思っています。

プロフィール

1960年東京生まれ大阪育ち。1978年横浜国立大学経済学部入学、新飯田ゼミ。1982年に卒業後、通商産業省入省。同期入省に平田竹男(現 早稲田大学大学院教授)がいる。補佐時代に、通商情勢分析、繊維政策、バイオ政策、米国ロチェスター大学留学、産業政策・通産省予算の統括などを経験。電力自由化(1997年)、ネット時代の情報政策(2000年)、買収防衛策解禁(2002年)、自動車産業政策(2005年)、官房秘書課長(2007年)を経て、民主党政権時代に国家戦略室審議官(2010年)。東日本大震災後は、総括審議官(2012年)、官房長(2013年)、資源エネルギー庁長官(2015年)として、福島復興とエネルギー政策を一貫して担当。2018年に経産省退官、東京海上顧問を経て現在、三菱電機CRO。内部リスク、BCPリスク、経済安保やサステナビリティ、サイバーなどの新領域リスクの制御を通じた企業価値向上を担う。